阪神淡路大震災からの
復興の軌跡
幣殿・拝殿復興記念特設
阪神淡路大震災にて被災する前の拝殿
はじめに
平成7年(1995年)1月17日に発生した兵庫南部地震(阪神淡路大震災)は日本ではじめての都市直下型大地震であり、一瞬にして阪神、淡路地域に大きな被害をもたらし、西宮市も広い範囲にわたって壊滅的な打撃を受けました。
当社も例外ではなく、奇跡的に御本殿の倒壊は免れたものの、幣殿・拝殿をはじめ、ほぼすべてのお社、建物、石像物が全壊・半壊・損傷の被害を受けました。
当社は平安末期の治承・寿永の乱(源平の戦い)により社殿が罹災したと伝わっており、大同元年(806年)に勧請されてからの約1200年の歴史の中で、800年前の戦乱とこの度の大震災と二度の大きな試練を経てきました。大震災からの復興再建は、一面では戦国の英雄池田輝政公の意思を継承することでもあり、歴史の悠久の連続を感ぜずにはおられません。
復興再建への道は長く険しいものでしたが、多くの方々のお力添えをいただき、第1期から第4期の工事を経て、大震災から27年。
ついに念願であった幣殿・拝殿を再建することができました。
これは、単に建物の再建というものではなく、たくさんのものを奪い去った大震災からの復興を意味するものと思っております。
被災から27年の月日が経ちましたが、幣殿・拝殿倒壊後に仮設された拝殿(プレハブ)の姿を見ると、今もなお、否応なく震災のことを思い出される被災者の方々もいらっしゃったかと思います。
また、震災後、新しく当地に住まわれた方やお生まれになられた方にとっては、これが当社の本来の姿と思われたかもしれません。
それが今、復興からの新たな一歩を踏み出したのです。
当社にとって、被災された地域の皆様にとって、多くの皆様にとって、この幣殿・拝殿の再建が新しいスタートを切る契機になると信じています。当社が、悲しい過去や苦しい過去の爪痕から脱却し、皆様にとって心落ち着く憩いの場所となり、昔のように「大市の八幡さん(おいちのはちまんさん)」として親しまれる存在となりますように。
被害の全容
全壊
半壊・一部損壊
幣殿・拝殿
末社
神饌所および太鼓橋
手水舎
蔵・参道土塀
鳥居2基
祖霊舎
遥拝所
灯籠
神輿・太鼓蔵
御本殿
社務所
玉垣
官舎
復興までの軌跡
大砲台修復工事
手水舎竣工
1995
平成7年
末社竣工
神輿・太鼓蔵竣工(下大市農会様による建設)
1月17日
阪神淡路大震災発生
激しい揺れのあと、何かが崩れるような大きな音がし、火災報知器がけたたましく鳴り響きました。
祈るような気持ちで急いでお社へ向かったところ、幣殿・拝殿が見る影もなく崩れ落ちていました。
御本殿は奇跡的に倒壊こそ免れたものの、地震の衝撃で建物と基礎との間にずれが生じ、覆屋にもたれ掛かる形となっていました。覆屋とは御本殿を保護するために設ける建物の事ですが、震災の数年前に筋かいを入れる耐震補強工事を行っていたため、震災を耐え抜き、その役割通り御本殿を守ってくれました。もし補強工事が遅れていれば、御本殿もろとも倒壊していたかもしれません。
先人たちが守ってきた神社施設がことごとく倒壊したことに、職員一同悔しく悲痛な思いでしたが、途方にくれている間もなく、倒壊建物の撤去にあたる必要がありました。大変有難いことに、先々代宮司の生前の奉職先でありご縁のあった大阪天満宮様、また全国神道青年会様が応援に駆けつけてくださり、1月下旬に撤去を完了致しました。そこから長い復興への道が始まりました。
本殿修復工事完了
神社施設で唯一激震を耐え抜いた御本殿ですが、地震の衝撃により建物が基礎から動いてしまい、覆屋にもたれて傾く形となっていました。そこでジャッキアップを行い、傾きを直す修復工事を行いました。
10月13日に工事の間遷座していた仮殿から御本殿への遷座祭を斎行し、無事15日の例大祭を奉仕することができました。社務所も半壊しため、直会は樋ノ口小学校様にお借りしたテントで行いました。
4月
仮授与所竣工
3月
仮拝殿竣工
復興まで時間を要した為、この仮拝殿を当社の本来の拝殿と思われている方も多くおられたかと思います。
震災後の混乱や余震の不安が続く中ではあったものの、神明奉仕を継続すべく、まず最初に着手したのが仮拝殿の設営でした。2月4日に地鎮祭を行い、3月10日に竣工祭を執り行いました。
10月
社務所竣工
第一鳥居竣工
2002
平成14年
祖霊舎・遥拝所移築及び屋根銅板葺替え
12月
2005
平成17年
参道塀竣工
7月
2007
平成19年
第二鳥居竣工
10月
2010
平成22年
灯籠修復工事完了
5月
2011
平成23年
11月
2012
平成24年
三 期 工 事
四 期 工 事
8月
12月
1996
平成8年
二 期 工 事
一 期 工 事
12月
1月
7月
お屋根銅板寄付本格開始
お屋根銅板寄付は、この時から始まりました。これまでに奉納いただいた銅板は大切に保管し、末社、祖霊舎、遥拝所、そして幣殿・拝殿のお屋根に使用させていただきました。
写真は、奉納いただいた銅板をお屋根に葺くために職人さんが加工した様子です。お名前は裏側になるため直接は見えませんが、皆様の銅板がこうした形でこの先幾年もお社のお屋根を守り続けていきます。
個人情報保護のため画像は加工済
2022
令和4年
4月17日
幣殿・拝殿竣工
令和4年4月、阪神・淡路大震災による壊滅的な被害から約四半世紀。大口の篤志家をはじめ、多くの皆様からご寄付を賜りましたことにより、未だ再建を果たせていなかった幣殿・拝殿が復興いたしました。
施工をお願いしました大下工務店様には、施工の依頼に対して格別のご配慮を賜りました。大下工務店様の皆様の卓越した匠の技により、厳しく、麗く、県の重要文化財である御本殿に相応わしい幣殿・拝殿が完成いたしました。震災を乗り越え新たな一歩を踏み出した当社が、これからも心落ち着く憩いの場として皆様に親しまれる存在でありますように。「このまちと共に、次の百年へ、」